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いつまで、真実から目を背けて生きますか?

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2007

0725
牛が環境への最大の脅威 FAO報告
環境問題への最大の原因は、
人間が食肉のために繁殖させた15億頭を数える牛だという。

国連食糧農業機関(FAO)発表
国連食糧農業機関(FAO)が先月末、家畜、特に牛が世界一の環境破壊者となったという調査報告を発表した。
Livestock’s long shadow,06.11.29 報告書(英文)PDFファイル

世界の家畜生産部門は、他のどの農業部門よりも急速に成長している。
それは13億の人々の生計を支え、世界の農業生産高の40%を生み出している。

途上国の多くの貧しい農民にとっては、家畜は更新可能なエネルギー源や不可欠の有機肥料源ともなっている。

経済的繁栄とともに、世界の人々は年々多量の肉と乳製品を消費するようになった。
世界の食肉生産は1991/2001年の2億2900万トンから2050年には4億6500万トンに倍増する一方、乳生産量も5億8000万トンから10億430万トンへの同様に増加すると予測される。

しかし、報告は、家畜、特に牛部門のこのような急速な成長は、気候変動、森林、野生動物にとっての最大の脅威となっており、さらに酸性雨から外来種の導入、砂漠化から海洋におけるデッドゾーンの創出、河川や飲料水の汚染から珊瑚礁破壊など、現在も最も深刻な環境問題の最大の元凶の一つになっていると言う。

この調査は、牛だけでなく、羊、鶏、豚、山羊が引き起こす環境問題も調査している。
しかし、
ほとんどすべての環境問題への最大の寄与者は、世界で15億頭を数える牛だという。


主に反芻動物に帰せられる家畜部門からの温室効果ガスの排出量は、
人間活動で排出される温室効果ガスの18%を占め、
自動車や飛行機、その他のあらゆる輸送手段から排出されるすべてを合せた量よりも多い。

家畜部門から排出される二酸化炭素は、飼料作物栽培のための肥料生産、農場での家畜飼育、その輸送、放牧地造成のための植生刈り払いなどの土地利用とその変化も考慮すると、人間活動により排出される二酸化炭素の9%を占める。

それは、二酸化炭素の296倍の温暖化効果をもつ人間活動由来の窒素酸化物の 65%も生み出す。

さらに、主に反芻動物の消化器から生み出される人間活動由来のすべてのメタン(二酸化炭素の23倍の温暖化効果をもつ)の37%も生み出す。

家畜は、酸性雨の主な原因であるアンモニアを始めとするその他100以上の汚染ガスも排出し、家畜からのアンモニアの排出すべての排出の3分の2を占める。

牧畜は世界中で森林破壊の主要な張本人となっており、
過放牧は世界のすべての草地と放牧地の5分の1を砂漠に変えた。

家畜は今や地表全面積の30%を使用している。
大部分は永年草地だが、これには飼料生産に使用される世界の耕地の33%も含まれる。
新たな放牧地の造成のために森林が刈り払われ、特にラテンアメリカでこれが森林破壊の主要な要因になっている。

以前のアマゾンの森林の70%が放牧地に変わった(2006 年、ブラジルの牛肉輸出額がオーストラリアを抜き、世界第二の牛肉輸出国になるという報道がある→Brazil Beef Export Value Seen Surpassing Australia,Cattle Network,12.11)。

同時に、牛は世界規模の土地の劣化も引き起こしている。
およそ20%の草地が、過放牧、踏み固め、侵食で劣化したと見られる。
この数字は適切な政策と家畜管理を欠く乾燥地域ではさらに高まり、砂漠化の進展の原因ともなっている。

家畜部門は、ますます希少になる地球の水資源への最大の加害者でもある。
フィードロットからの廃棄物や飼料生産に使われる肥料は水を富栄養化させ、
あらゆる生き物の命を脅かしたいる。
家畜部門は、とりわけ水汚染、富栄養化、珊瑚礁破壊の最大の元凶となっている。
主要な汚染物質は動物排泄物、家畜の保護と成長促進のために使われる抗生物質とホルモン、製革所からの化学物質、肥料、飼料作物に散布される農薬だ。
広範に広がった過放牧が水循環を撹乱、地表水・地下水に戻る淡水の量を減らしている。
その上、飼料生産のために大量の取水が行われている。

家畜は、南シナ海の主要な燐・窒素汚染源と推定され、
海洋生態系の生物多様性損失の原因となっている。

食肉・乳生産動物は、今やすべての陸棲動物バイオマスの20%を占める。
広大な土地での家畜の存在と飼料作物需要は生物多様性の損失の原因ともなっている。
調査された24の重要な生態系のサービスのうちの15が退化しており、
家畜がその一つの元凶と認められた。

報告は、劇的な変化がないかぎり、家畜部門による環境損害は、
肉需要の増大により、2050年までに倍以上に増大すと結論し、
改善のための様々な手段を提案する。

土壌劣化が起きやすい地域からの家畜の排除や土壌劣化を減らし・覆すような土地利用を奨励する直接支払を伴う土壌保全的農法や林地放牧などの利用、腸内発酵、従ってメタンガスの排出を減らすような家畜飼料の改善や排泄物リサイクルのためのバイオガス工場の設置などの家畜生産と飼料作物農業の効率改善、コストをすべて支払う水価格設定などによる灌漑システムの改善、等々だ。

しかし、誰が、どうやってこれを実現できるのだろうか。

多くの途上国の農民や政府には、こんなことを考える余裕さえない。
高い水価格は、払えなくて飢え死にする農民を増やすだけだろう。

重大な環境汚染と健康被害を引き起こすと長い間非難が集中してきた米国の”工場畜産”も、環境規制強化を逃れてますます繁盛している。

オーストリア農民は、生態系どころか、都市民の飲み水さえ犠牲に、大量に水を使う輸出農業に励んでいる。

これらの”技術的”措置が実現したとしても、問題をどれほど軽減できるのかという問題もある。
報告はこの問題には答えていない。

しかし、今年10月に発表されたWWFのエコロジカル・フートプリント(我々が利用する資源を提供し、また我々の廃棄物を吸収するために必要な生物的に生産的な土地と水域の面積)は、2003年にして141億㌶、一人あたりでは2.2㌶で、既に能力の1.8㌶を大きく超えている(2050年 現在の生活スタイルを続けるには地球2個分の資源が必要ーWWF報告,06.10.25)。

家畜に関連した活動がこれにどれほど寄与しているかは不明だが、報告は、牧場や作物栽培のための土地利用を通じて直接的に、(家畜生産における化石燃料の使用からの)二酸化炭素の吸収に必要な面積を通じて間接的に、大きく寄与していると認める(65頁、ボックス)。

世界の現在の人口は約60億だから、15億の牛が飼育されているということは、平均すれば4人が1頭の牛を飼っていることになる。

1家庭4人とすれば、すべての家庭が1頭の牛を飼っているということでもある。
その上、およそ160億羽の鶏と10億頭の豚もいる。これがフートプリントに巨大な影響を与えていることは間違いないだろう。それが将来は倍に増えるというのだから、これらが実現したとしても現状が改善されるとは思えず、むしろ悪化すると考えるべきだろう。

この報告の起草者は、肉消費を減らすことこそが環境・自然資源・人間の健康を護る近道だという多くの研究をどう考えているのだろうか。

人間が牛肉から100カロリーを摂取するには、牛は植物から1000カロリーを摂取せねばならず、牛からではなく、植物から直接100カロリーを摂るとすれば、植物生産は10分の1で済む。

米国の研究者は、米国農業や個人の移動により使われる化石燃料に関するデータと食品に関する統計データから、平均的な米国人の肉ベースの食事は、同じカロリーをもつ植物ベースの食事よりも、年・一人当たり1.6トン多い二酸化炭素を生み出すと計算している(肉食か菜食かで食品生産による温暖化ガス排出量に大差ー米国の研究が菜食の勧め,06,4.28)。

米国における肉牛のフィードロット(一種の牛生産工場)穀物肥育や草地を離れた工業的酪農は、戦後、安価なトウモロコシの大量生産が可能になったことから始まった。
それは今や途上国も含む世界中に拡散しつつある(ワールドウォッチ報告 工場畜産の世界的拡散と環境・健康・コミュニティー破壊に警告, 05.10.1)。
しかし、トウモロコシ(と、やはり穀物肥育に使われるソルガム)を1トン(乾物量)を作るのに必要な水の量は、200トンから300ト ンとされる。
イネ、コムギの300-400トン、マメ科作物の500-600トンと比べれば少ないとはいえ、その生産の急拡大は、地球温暖化の進行に伴う 干ばつの拡大と激化で水資源の一層の希少化が予測されるなか、米国の地下水位を急速に低下させつつあり、給水制限が例年のこととなったヨーロッパのトウモロコシ主産国・フランスでは、トウモロコシ栽培のための大量の灌漑水取水が水不足の最大の元凶と非難を浴びている。

今年の国連環境計画地球水アセスメントは、2030年までに17億増える人口を養うためには、灌漑の効率の大きな改善、天水に頼る作物の収量増加ととともに食肉消費も減らさねばならない、牛肉から500カロリー摂るには米から500カロリーを摂る場合の20倍の水が必要になると言っている(国連環境計画地球水アセスメント 水効率の悪い灌漑農業を止め、肉消費も減らせ,06.3.24)。

温暖化対策を銘打ったバイオ燃料・エタノール生産の急拡大が、皮肉にも温暖化と水不足の加速に貢献している。
根本的問題は、2050年までに倍増すると いう肉と乳の生産をどう抑制するかではないのだろうか。 家畜生産に生計がかかる途上国の人々が家畜を減らすのは難しいし、好ましいことではないかも知れない。
しかし、少なくとも先進国の大規模”工場畜産”やそ の世界中への拡散には歯止めをかけることが必要だ。
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